証券口座の開設が完了し、いよいよ実際に取引注文を行おうとしたら「指値」や「成行」といった見慣れない言葉が並んでいて戸惑った覚えはないでしょうか。
株式を売買する際は買い注文や売り注文といった”注文”を出す必要があるわけですが、この”注文”には「指値(さしね)」と「成行(なりゆき)」の2種類があります。
今回はこの2種類の注文方法について、どういうタイミングで活用すれば良いのかについて初心者目線で考えていきます。
指値

指値注文とは
指値とは、自身が取引したい価格を指定して注文する方法です。
”買い”の場合は上限価格を指定して株価がその価格まで下落してきた場合に注文が成立することになり、”売り”の場合は下限価格を指定して株価がその価格まで上昇してきた場合に注文が成立する事となります。
例を挙げて詳しく説明しましょう。
まずは”買い”についてですが、現在の株価が448円であるA社の株式を、440円で購入するために指値注文を設定した場合、株価が440円まで下落してきたら注文が成立することになります。

次に”売り”についてですが、同じく現在の株価が448円であるA社の株式を既に保有しており、455円で売却するために指値注文を設定した場合は、株価が455円まで上昇してきた際に注文が成立することになります。

メリット
指値注文を行う一番のメリットは、自身が希望する価格で売買ができるという点です。
あらかじめ設定しておいた価格になれば自動的に注文を入れてくれる為、常に株価を監視しておく必要がなく、日中に売買注文を出すことができない方にとっては非常に便利な注文方法になります。
ただ、注意すべき事として希望する価格に達しない場合は購入ができないことが挙げられます。
先程のA社を例にとると、”買い”の際は株価が441円まで下落していてもそこから反転して上昇してしまえばA社の株式は購入できませんし、”売り”の際は株価が454円まで上昇してきたとしてもそこから下落してしまった場合はA社の株式を売却することができないという点には気をつけなければなりません。

もし、価格に関わらずどうしても売買したいという場合は、これからご紹介する成行注文が有効になります。
成行

成行注文とは
成行とは、値段を指定せずに注文する方法です。
”成行買い”注文を出した場合は、その時に売りに出ている最も低い価格で取引が成立し、”成行売り”注文を出した場合はその時に買い注文が入っている最も高い価格で取引が成立します。
ここでも、例を挙げて詳しく説明しましょう。
まずは”成行買い”についてですが、先程と同様に株価448円のA社を成行で購入した場合、売りに出ている最も低い価格である450円で売買が成立することになります。

次に”成行売り”ですが、既に保有しているA社の株式を成行で売却した場合、買い注文が入っている最も高い価格である448円で売買が成立することになります。

メリット
価格にこだわらず、とにかく売買を成立させたいという場合は成行注文が有効です。
成行での注文は、指値での注文より優先されて売買が成立します。
指値で成立待ちの列に並んでいる人たちを横目に、一番前に割り込みをして売買を成立させるイメージです。
ただ、成行での売買にも注意点があります。
成行での注文は、想定より高い株価で買い注文が成立したり、想定より低い株価で売り注文が成立することがあったりと、自身の想定した株価で売買できない可能性があるのです。
相場が激しく変動していたり、市場で取引されている株式数が少ない銘柄で他の投資家の成行注文より少し遅れて注文を出してしまったりすることで、448円で取引するつもりだった買い注文が500円で成立していたり、売り注文が400円で成立してしまっていたりする点は認識しておきましょう。
指値と成行の使い分け
初心者は指値がおすすめ

私は、初心者には指値での取引をおすすめします。
理由として、以下が挙げられます。
- 指定した価格の根拠を明確にし、今後に活かす
- あらかじめ決めた価格がブレないようにする
それぞれについて、詳しく解説していきます。
指定した価格の根拠を明確にし、今後に活かす
新規で株式を購入したり、保有株を売却しようとする際には、何かしらの理由があるはずです。
売買するにあたり、エントリータイミングや利益確定・損切りのタイミングは非常に重要ですが、自身がなぜその価格で売買するのかという根拠を明確にしておけば、後々に成功や失敗の理由が何であったかを検証しやすくなります。
根拠もなく、その場の勢いで売買していると自身の売買の傾向も掴めない為、初心者のうちは落ち着いて状況を整理し、明確な根拠を持って価格を指定するクセをつけましょう。
もちろん、取引記録をつけることは必須です。
あらかじめ決めた価格がブレないようにする
グングン上昇していく株価を見ていると、「これは買わないと!」という気持ちになってしまったり、逆に株価が徐々に下がってきて含み損が大きくなってくると、意に反して売ってしまったりしてしまうことがよくあります。
初心者は特に、こういった高値掴みや狼狽売りをしてしまいがちです。
冷静でない心理状態のときに焦って売買をしてしまわない様に、「この株価まで下りてこないと買わない」「この水準まで落ちてきたら損切りをする」といった価格をあらかじめ指値で設定しておくことで、高値掴みや狼狽売りを防ぐことにも繋がっていきます。
経験上、焦って注文を出したときは大抵高値掴みや狼狽売りとなって損失を出しています。
成行の方が良い場面

初心者には指値がおすすめだとお伝えしましたが、成行の方が良い場面があります。
それは、悪材料が出たときや市場全体が急落しているような状況の損切りです。
こういった場面では損失が大きく膨らんでしまう可能性がありますので、損失を最小限に抑える為に、とにかく保有している株式を売る必要があります。
「もしかしたら戻るかもしれない」と保有を続けていると塩漬け株になってしまいますし、大きな含み損の株式を持ち続けるのは精神衛生上にも良くないので、損切りは成行で早めに行いましょう。
まとめ
指値と成行の注文方法の違いは、「価格を指定するかしないか」という点になります。
初心者のうちは自身の取引傾向の把握や売買理由の明確化を目的として指値を中心に活用し、急な株価変動の際は損失を拡大させない為にも一旦ポジションを外すといった使い分けを行う様にしましょう。