企業が出すIR情報として、「自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得に関するお知らせ」などというリリースを目にすることがあると思います。
いわゆるToSTNeTでの「自社株買い」の発表ですね。
自社株買い自体は投資家にとって喜ばしい報告であると思いますが、この「ToSTNeT-3」という見慣れないワードを疑問に思ったことはないでしょうか。
そんな方のために、今回はこの「ToSTNeT-3」についてわかりやすく解説していきたいと思います。
ただ、正直に言って「立会外で行う取引制度」というぐらいの認識で問題ないかなとも思いますので、ご興味があれば読み進めてみてください。
目次
ToSTNeT取引とは
正式には「ToSTNeT取引」で、東京証券取引所の立会外取引のことです。
「Tokyo Stock Exchange Trading NeTwork System」の略で、「とすとねっととりひき」と読みます。
東京証券取引所は立会外取引として1998年6月から単一銘柄取引(1999年9月までは大口取引)・バスケット取引を、同年8月からは終値取引を開始するなどし、大口取引やバスケット取引が通常の取引への影響を抑えて円滑な遂行ができるように努めてきましたが、高度化・多様化する近年の取引において、より柔軟な取引が行えるように2008年1月からToSTNeT市場として独立した市場を創設しました。
立会市場に上場する、内国株、外国株、ETF、REIT、転換社債型新株予約権付社債(CB)は、ToSTNeT市場にも上場します。
バスケット取引とは複数の銘柄をまとめてバスケットに入った1つの商品として売買する取引のことをいいます。
東京証券取引所では15銘柄以上かつ1億円以上の取引と定義しており、大口の投資家がまとまった銘柄を買いたい(売りたい)ときなどに証券会社がコスト分を上乗せして約定をつけます。
ToSTNeT取引の種類

ToSTNeT市場では、単一銘柄取引、バスケット取引、終値取引、自己株式立会外買付取引の4種類の取引を行うことができます。
それぞれ、見ていきましょう。
単一銘柄取引(ToSTNeT-1)
単一銘柄取引は一つの銘柄を取引する際に使われ、立会市場の直近値から上下7%以内の価格で相手方を指定した取引ができます。
一つの銘柄での大口取引を立会市場で行ってしまうと、その銘柄の株価に対するインパクトが非常に大きくなってしまう可能性があります。
そのため、大口取引等の立会市場での円滑な執行が困難な取引をToSTNeT市場において行うことにより、立会市場へのインパクトを抑えることができます。
なお、単一銘柄取引は最低単位から取引が可能です。
バスケット取引(ToSTNeT-1)
バスケット取引とは、複数の銘柄をまとめてバスケットに入った1つの商品として売買する取引でしたね。
この取引では、相手方取引参加者・銘柄・数量・決済日等を指定し、構成銘柄の立会市場の直近値で算出する基準代金の上下5%以内の価格で取引することが可能です。
先述のとおり、15銘柄以上かつ売買代金1億円以上から売買ができます。
終値取引(ToSTNeT-2)
立会市場での終値又はVWAPを確認してから参加できる取引です。
バスケット取引の基準に満たない少数銘柄のバスケット注文についても、終値等で取引が可能になります。
終値取引の取引価格となる終値は、取引する時間によって変わってきます。
- 8時20分~8時45分 ⇒ 前日終値
- 11時30分~12時15分 ⇒ 前場終値
- 15時~16時 ⇒ 当日終値
また、終値取引を利用した事前公表型の自己株式取得も可能です。
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)
自己株式立会外買付取引は買方を発行会社に限定した自己株式取得専用の取引で、いわゆる「自社株買い」専用の取引になります。
終値取引では完全時間優先で売買が成立するのに対し、自己株式立会外買付取引では買付数量に相当する売付数量を取引所が定める配分方法をもって配分します。
売買は、最低単位から可能です。
ToSTNeT活用状況の確認方法
TosTNeT取引における超大口約定情報については、日本取引所グループのHPで確認することができます。
過去2週間分が掲載されていますので、気になる取引がある場合はこちらで確認してみるとよいでしょう。

また、過去2週間の自己株式立会外買付取引情報も掲載されています。

株式投資を行う上で、「それぞれの取引の特徴についてしっかり把握しなければならない!」という内容ではないかなと思いますが、一つの知識として知っておいてもよいかなという程度ですかね。
どちらかというと、最後の約定情報の方が日々の投資判断には役立つかもしれません。
また、この機会に自社株買いについても確認したいという方はこちらの記事も参考にしてみてください。
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自社株買いは株主還元になる?メリット・デメリットと株価への影響
以上、ToSTNeT取引についての解説でした。