MSワラントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは企業の資金調達方法の一つですが、投資家にとっては非常にデメリットが大きな方法となり、発行後は多くの場合で株価の下落に繋がります。
今回は、「悪魔の錬金術」などとも呼ばれるMSワラントについて、初心者向けにまとめていきます。
MSワラントとは

MSワラントは「Moving Strike Warrant」の略で、日本語では「行使価格修正条項付新株予約権」のことを表します。
簡単に言うと、株式市場の株価より常に低い価格で新株を発行できる権利となり、引受先が必ず儲かる仕組みとなっています。
なぜなら、現在の株価より低い価格で発行した株式を市場で売るだけで利益がでるからです。
引受先が儲かる仕組み
もしあなたが、その日の終値より確実に安い金額で、いつでも株式を購入できる権利を持っているとしたらどうでしょう。
・・・こんなに良いことはないですよね。
引受先が持っているのは、そんな権利です。
ここで、引受先が儲かる仕組みについて例を挙げて説明します。
まず、株価5,000円のA社がMSワラントを発行したとしましょう。
この後引受先が何をするかというと、空売りを仕掛けます。
そうしてある程度株価を下げたところ(例では3,000円まで下げたとします)で新株の権利を行使し、ディスカウントされた価格で株式を入手します。
次に、この株式を空売りの返済に充てます。(ここでは行使価格の条件が前日の90%とされていた場合とします)
こうして、空売りで得た儲けとディスカウントされた株式を売却した儲けを利益として得ることができるのです。

メリット・デメリット

仕組みについて簡単に説明してきましたが、MSワラントによって投資家や企業にどういう影響があるのかを見ていきましょう。
一番得をするのは引受先
まず、先ほどの説明にもある様に、ノーリスクで利益を得ることができる引受先が一番得をすると考えられます。
通常、行使期間は2~3年で設定されることが多く、期間内であれば引受先はいつでもカードを切れます。
株価が大きく上がったタイミングで空売りを仕掛ければ、非常に大きな利益を得ることができます。
常に主導権を持ち、自分の好きなタイミングで動けるという点を考えても、MSワラントのメリットを一番享受できるのは引受先だろうと思います。
一番損をするのは既存投資家
逆に、不利益を被る可能性が一番高いのがMSワラントを発行した企業の株式を保有していた既存投資家です。
まず、MSワラント発行を嫌気した多くの株主が売りを出します。
それによって株価は大きく下がる上、発行済株式数が増えることによって株式の希薄化に繋がります。
また、MSワラントの引受先からの空売りも警戒しなくてはなりません。
当然のことながら、空売りは株価が高くなったところで仕掛けた方が利益は大きくなります。
株価が上昇中であっても急に空売りを仕掛けられることを常に警戒しなければならないので、初心者や小資金の個人投資家にとっては精神衛生上良くないかもしれません。
このような点から、一番損をするのは既存投資家であると考えられます。
MSワラントを発行した「Kudan」について

当ブログを読んで頂いている方はご存じかもしれませんが、私は5月20日にMSワラントの発行を発表した「Kudan【4425】」を保有していました。
MSワラント発行のIRが出た翌日はストップ安となり、大きく株価が下落する事態に見舞われました。
しかし、現状ではそのまま大きく下落を続けることなく、上昇トレンドを継続しています。
引受先のメリルリンチ日本証券がいつ空売りを仕掛けてくるのかわかりませんが、もし今も保有を継続していたら、一日一日の株価変動が気になって仕方なかったと思います。
ちなみに、ここにきて岩井コスモ証券が新規に投資判断を「A」に格付けし、目標株価を6,500円と設定しました。
これをどう受け取るかは個人の考え方によりますが、こうやって個人投資家に買わせて空売りの養分にするのかなと個人的には感じてしまいました。
短期スパンで取引をしている方などは過度に警戒する必要もなく、うまく値幅を取ることができるのであればボラティリティの大きな良い銘柄だと思いますし、長期的に見たら非常に将来性の楽しみな企業であることは間違いないです。
しかし、初心者が扱うには覚悟がいるかなとも思います。
これからどういう動きを見せてくるかわかりませんが、値動きはしばらく追っていきたいと考えています。
まとめ
ここまでMSワラントについてみてきましたが、勘違いしてはならないのは、MSワラントも資金調達手段の一つであることに変わりはないという事だと思います。
企業の成長のために資金調達が必要であれば、いろいろな手段を講じることは当然だと思います。
ただ、既存株主を軽視していると捉えられても仕方のない資金調達方法であると思いますので、余程魅力的な事業を行っていたり将来の成長性が高い企業でない限り、個人的には応援したいとは思えない企業であり経営陣だなというのが本音です。
結論として、MSワラントを発行した企業に関してはしばらく触れない方が無難かなと思います。
特に初心者は対応が難しいと思いますので、他の銘柄で取引することをおすすめします。
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